書籍

なんしょんな!!香川・PARTT
なんしょんな!!香川・PARTT
「行政の役割」水は誰のものか/人の渡らぬ橋、車の走らぬ道/広い家 他
1,200円(税込み)
有料会員のみ閲覧できます
なんしょんな!!香川・PARTU
なんしょんな!!香川・PARTU
「高齢者対策の処方箋」
1,200円(税込み)
有料会員のみ閲覧できます
なんしょんな!!香川・PARTV
なんしょんな!!香川・PARTV
「教育の危機」学校教育の危機/崩壊する家庭教育/的外れの企業内教育
1,200円+税
有料会員のみ閲覧できます
なんしょんな!!香川・Q&A BOOK
なんしょんな!!香川・Q&A BOOK
「Q&A」行政の役割/水問題/交通問題/時事
800円(税込み)
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKU
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKU
この本は、都村長生氏の政経塾「長生塾」とそのホームページに寄せられた質問に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです
800円+税
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKV
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKV
この本は、当ホームページに寄せられた質問に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです。
100円+税
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKW
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKW
この本は、当ホームページに寄せられた質問(2003年5月〜2007年3月)に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです。
100円+税
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKX
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKX
この本は、当ホームページに寄せられた質問(2007年5月〜2008年12月)に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです。
100円+税

POST長生塾スタートのお知らせ

なんしょんな Q&A詳細

  • 【164】 (1)成長欠乏症の処方箋(2009.11) (高松市・53歳・会社役員、他数名から同種の質問あり)
     都村さんは民主党政権に対して「予算の組み方さえ変えてくれれば合格だ」「投資の優先順位を間違わないで欲しい」とおっしゃっていましたが、いざ政権が始まってみると予算の組み方は何か変わってきたように思うのですが、予算の使い方については何かものすごくバラマキ福祉的な分野に重心が偏っているように見え、とても危なっかしく思えます。これでは日本はとても成長路線に転換することができるとは思えないのですが、都村さんは今の日本に必要な「優先順位の高い投資」とはどういう分野だとお考えですか?
  •  民主党政権に関する質問を何人かの方から頂いていましたので、この方の質問と一緒にいくつかの項目を合わせてお答えします。

     まず「国の投資の優先順位」について、Q160「民主党政権への不安」の中で「日本というある種特殊な社会構造を持つ国で短期・中期的に行政が投資効率を上げようとすれば、大企業とお金持ちに優先的にお金を渡すしかない」と申し上げましたが、今回は少し踏み込んで、今の日本が迎えている「局面」における投資の優先順位についてお話しします。国の投資の優先順位は国ごとに違ってくるとともに、もう一つ、その国が今どういう局面にいるか、どういう困難に直面しているかによっても大きく違ってくるからです。また、このイシューを考えることは50年くらい先の将来日本がどういう国になっているのか、そのビジョンを描くことにつながってきます。

    会社が伸びるには「しきい値」を越えるエネルギーが必要だ

     いつものようにビジネスに例えて考えてみましょう。縦軸に会社の規模(売上)、横軸に成長に要した時間をとって、その成長曲線を見てみると、成功した会社というのは時間とともに直線的に規模が大きくなっていくのではありません。まず会社の立ち上げ当初(創業期)はゆるやかに上昇カーブを描き、ある時から右肩上がりに急勾配でぐんぐん伸びる「膨張の時代」に入ります。続いて持続的に安定成長する「成長の時代」になって勾配は緩やかになり、その後「成熟の時代」になって成長曲線は横ばいになる。そこで有効な手を打った会社はもう一度クォンタムジャンプ(「核跳」。私の造語です。詳細については拙著『企業核跳変身』<ダイヤモンド社>参照)してぐんと伸びる…というふうに、成功した会社というのは必ず「S字カーブ」を描いて伸びていくのです(図参照)。つまり会社が成長していく過程において「ぐんと伸びる」場面は「膨張期」と「核跳期」の2度ある、ということですが、そこで伸びるためのポイントが2つあります。



      1つ目は、伸びるためにはスレッショールド(「しきい値」または「閾値=いきち」)という目に見えない「壁」を突破しないといけない、ということです。「しきい値」とは一つの事象があるフェーズから次のフェーズに移る時に必ず越えなければならない「壁」で、これを越えるためにはある一定量のエネルギーが必要になり、そのエネルギーに満たない努力をいくら積み上げても越えることはできない。例えば、ロケットが大気圏を突破して宇宙に飛び出るためには「秒速11キロ」のスピードが絶対に必要で、それに満たないエネルギー、例えば秒速10.99キロでも地球の引力に引き戻されてしまいます。つまり秒速11キロというエネルギーに達しない限り、大気圏突破という「しきい値」を越えることはできないのです。あるいは、受験で合格ラインが500点だったとすると、499点の人はわずか1点の差ですが不合格になる。つまり、いくら努力しても500点に達するエネルギーを出さない限り合格ラインという「しきい値」を突破することはできない。そういう「壁」が、会社の成長においても「膨張期」と「核跳期」にあるのです。従って会社が成長するためには、膨張期と核跳期においてそれぞれ非常に大きいエネルギーが必要になるのです。

    膨張期と核跳期の処方箋は違う

     2つ目のポイントは、会社の膨張期と核跳期では「しきい値」を越えるために必要なエネルギーの「質」が違うということです。まず膨張期において「しきい値」を越えるために必要なものは、「集団を動かすシステム」です。膨張期に伸びるためには、利益を出すことが一番の条件となります。従って、利益を出すための機能的かつ効率的なルールや社員全員のモチベーションを上げる仕組み等(システム)を作り、全員で一生懸命営業し、コストダウンに励み、きちんと予算管理をやり…というふうに社員全員が利益意識を持って一生懸命働けば何とかなる。膨張期に「しきい値」を越えられない会社は「利益欠乏症」なのですから、利益を出すシステムがその処方箋となるわけです。ちなみにこの利益欠乏症に対する処方箋はそれほど難しいものではありません。周りにそういうシステムをうまく機能させて成功した会社がたくさんあるわけですから、基本的にはそれを手本にして(真似をして)努力すればいいのです。

     一方、核跳期にジャンプするためには膨張期とは全く違った処方箋が必要になります。利益を出すシステムをうまく機能させて膨張した会社が成長し、大企業となり成熟期を迎えて伸びなくなってきたという局面なのですから、これを打開して再度ジャンプするためにはそれまでと同じこと(全員で組織的に努力する)をいくらやってもダメなのです。ここで成熟期を脱しきれず停滞している会社は、利益欠乏症ではなく「成長欠乏症」だと言えます。そこで新たな成長、すなわち「核跳」するために必要なものは、圧倒的な能力、エネルギーを持った「個人」なのです。イメージするならその「個人」はビジネスが好きで好きでたまらないギラギラした人であり、ビジネスで成功することに強い欲求を持って常軌を逸するほど一心不乱に働き、斬新な発想を持って起業し、大きく育業する。すべての時間と労力を新しいビジネスに集中投入して成功を目指すという人です。例えばビル・ゲイツやジャック・ウェルチを想起すればよいでしょう。そういう「個人」を私は「パルチザン」と呼んでいますが、彼らの持つ圧倒的なエネルギーだけがこの「しきい値」を突破することができる。つまり「成長欠乏症」に対する唯一の処方箋が優れた個人、「パルチザン」の存在なのです。

     これは空中戦に例えれば、「膨張期」にはレシプロエンジンのゼロ戦をたくさん作ってパイロットを鍛え、戦略を練ってみんなで一生懸命頑張れば、多少性能の高いグラマンが相手でも十分に戦えた。しかし、そこにジェット機(F-15イーグル)が1機出現すると、もうゼロ戦を何百機、何千機増やそうが、あるいはゼロ戦の性能をいかに上げようがどうにもならない。つまりF-15を生み出すエネルギーを持つ者が、「核跳期」にジャンプするためのパルチザンだと考えればわかりやすいでしょう。まとめれば、会社には大きく分けると「利益欠乏症」と「成長欠乏症」の2つの「病気」があり、それぞれ処方箋は全く違うものだ、というのがビジネスのセオリーなのです。

    今の日本は「成長欠乏症」だ

     では日本は今、会社に例えればどちらの「病気」にかかっているのか? これまで戦後60年間、日本は勤勉な国民性を生かして一生懸命努力し、トヨタの「カンバン方式」をはじめ「カイゼン」「QCサークル」といった世界に名だたる生産技術やモチベーションアップのシステムを生み出し、まさに社員全員一丸となって膨張期の「しきい値」を越え、戦後の奇跡の復興を成し遂げてきました。しかしそれが今は行き詰まってきて、これまでのやり方の延長線上でいくら努力しても次の成長はとても実現できないという局面にあります。つまり、明らかに今の日本は「成長欠乏症」なのです。従って、現状を打開して新たな成長を実現するには「do better(今までより良くする)」ではなく、パルチザンによる「do differennt(今までと違ったことをする)」を期待するしかない、ということになります。

     ただし、パルチザンという資質の人たちはどこにでもいるわけではない。世界中に限られた人数しかいないし、我々がそう簡単にパルチザンになることもできません。従って、これからは国単位、地方単位、会社単位で世界中の限られた数のパルチザンの取り合いになるだろう、そして、そのパルチザンが居着いた、あるいは育ってきた国や地方や会社だけがジャンプでき、成長路線に乗って生き残れる、あとは代謝が起こって滅んでいく…そういう時代がこの30年〜50年くらいの間続くでしょう、というのが私の予測です。とすると、日本が今打つべき手段は「パルチザンが日本で(あるいは地方で、会社で)ビジネスをやりたくなるような環境を作る」ということになります。パルチザンが起こすような先端成長ビジネスには国境がありませんから、良い環境を作れば彼らは世界中からどこにでもやって来ます。例えばパルチザンにはビジネスで成功して大きな富や名声を得たいという強い欲求がありますから、成功すれば彼らに大きなリターンを与えるような優遇税制をとる、あるいは研究開発がやりやすいような充実した環境づくりに投資する…等々、とるべき政策はいくらでも考えられます(ちなみに私は15年以上前から『なんしょんな!香川』で「香川や四国を経済特区にして世界中のパルチザンを集めよう」と提唱しています。『なんしょんな!香川PART1』P163参照)。繰り返しますが、我々はパルチザンになることはできませんが、彼らが好むビジネス環境を作ることはできるのです。すなわち、「成長欠乏症」の日本においては、パルチザンが集まるような(あるいはパルチザンが育つような)政策への投資が最も優先されるべきだ、というのが私の意見です。

    「富を生み出す人」のことを全く考えてない

     しかし残念ながら現実は、民主党も自民党も「利益欠乏症」の処方箋ばかりが頭の中にあるようです(というより根本的に「利益欠乏症」と「成長欠乏症」の区別さえできていないのではないでしょうか?)。要するに「富をどう再配分するか」ばかり考えていて、成長欠乏症の処方箋である「富を増やすこと」を考えていないのです。富が増えない限り、再配分するお金が出てくるはずがない。では、誰が富を生み出すのか? 富を生み出す人を増やすにはどうすればいいのか? そこに全く思いが至っていないとしか言いようがありません。

     例えばこれまでの自民党政権では投資はハコモノの公共投資と第一次産業の補助にばかり充てられ、そのためパルチザン的な人材は嫌気が差し、地方から東京へ、そして海外へみんな出て行ってしまった。結果、日本や香川に残ったのは、極論すればほとんど老人と子供と農民、漁民と役人だけになってしまいました。しかもこの期に及んで谷垣氏が掲げたキャッチフレーズが「みんなでやろうぜ」ですか? みんなでやって成果が出たのは「利益欠乏症」の時で、成長が必要な時にみんなでやっても意味がないことは先に述べました。根本的な処方箋を間違ってしまっている。ビジネスについて全く何もわかっていないことを公言しているようなものです。一方、民主党も「貧しい人にお金を配りましょう」と言っているわけですから、こちらも「成長欠乏症」の処方箋としては全く逆行しています。とにかく私に言わせれば両方ともトンチンカンなことばかりやっているわけです。あげくに自民党は「民主党には成長戦略がない」と責め、民主党は「あなた方に言われたくない」と返している。私に言わせれば、どちらにも言われたくない。どちらも「成長とは何か?」「成長するために何をすればいいのか?」が根本的にわかっていない。ただ「成長戦略」という中身のない言葉だけが空虚に躍っているだけなのです。繰り返しますが、成長は「優れた個人(パルチザン)」しか作り出せないのです。平凡な人を100万人集めていくら頑張っても、パルチザン1人が生み出すアウトプットには絶対に到達しない。ましてや貧しい人100万人にお金を配っても、絶対にクォンタムジャンプすることはできない。それがビジネスのセオリーだということを知るべきです。

     ちなみに私が「民主党は予算の組み方さえ変えてくれれば合格だ」と申し上げたのは、ジャンプするための第一歩として、国益より省益を優先するような官僚の手からまずは予算の作成権を取り上げない限り何も始まらないからです。まず第1ステップとしてそこだけでもやってくれれば、その後、第2ステップとしてビジネスのわかるちゃんとした政治家が出てきて、予算をパルチザンに振り向けるようにすればいい。もちろん一度にそれができれば一番いいのですが、そんな政治家は今皆無ですから、とりあえずちゃんとした政治家が出てきた時の準備として段階を踏んでいくしかない、と考えたからです。これは裏返せば「政治家は国民の鏡だ」と言われるように、有権者が自分で考える能力をつけ、ちゃんとビジネスのわかる政治家を選ぶこと、すなわち日本の民主主義が成熟することが絶対条件になる、ということに他なりません。

    軍事産業と宇宙産業がイノベーションを生み出す

     「成長する」ということに関して、もう一つ大切な話をしておきます。今、ほとんどの技術イノベーションはアメリカから出ています(スウェーデンやフランス等、欧州がイノベーションを起こしていると言われていますが、そのほとんどのビジネスの種はアメリカから出ているものです)。なぜアメリカからイノベーションが起こるのかと言えば、それは国としてパルチザン(アメリカンドリーム)を優遇する政策を取っていること以外に、軍事産業と宇宙産業に注力していることを忘れるわけにはいきません。アメリカの技術的なイノベーションというのは、ほとんど軍事産業と宇宙産業がベースになって出て来ています。これらの産業はいずれも、あらゆる分野の非常に高度な先端技術の集大成であり、極論すれば医療産業、バイオ産業、原子力開発、電子産業…等々、すべての産業の先端技術が軍事産業と宇宙産業に向かい、活用されているといっても過言ではありません。軍事産業と宇宙産業を頂点に、国を挙げての要素技術の巨大なピラミッドが形成されているというイメージです。その頂点に国が巨額の投資をし、そこから発明発見が生まれ、イノベーションが起こる、そしてその成長の種をパルチザンが大きくビジネスとして育て上げる…こういった構図をとっているのがアメリカです。

     翻って日本を見てみると、日本では自動車産業や電子産業、医療、バイオ等々、個々の企業は確かに優秀な技術を持っているのですが、それらが別々に小さなピラミッドとしてバラバラに点在しているだけで、国を挙げて取り組むような大きなピラミッドの頂点に当たる産業がないことに気づきます。従って、技術開発に投入する資金も小さく、技術をベースとした大きなイノベーションがなかなか生まれてこないのです(アポロを作るのとカーナビを作るのでは技術のエッセンスと精度のレベルが違いすぎるのはおわかりでしょう)。ちなみに他の方の質問によると「市場原理主義がイノベーションやベンチャービジネスを生み出すというのは、市場原理主義者(アメリカ)の幻想だ」という意見があるようですが、たぶん福祉先進国のスウェーデン等の欧州が安定成長しているではないか、ということがこういった考えのベースとなっているようですね。しかし、先述のスウェーデンもフランスもビジネスの現場ではアメリカ以上のすごい競争社会ですよ。皆さんが知らないだけです。加えて、この2国は有名な軍事産業を持っている有数の武器輸出国であることを忘れてはいけません。彼らもそれなりに成長の条件を満たしていることを付記しておきます。つまり、成長欠乏症を脱出して再度ジャンプできるような大きな技術イノベーションは、国レベルの大きなピラミッドの頂点産業がない限り非常に起こりにくいのです。そういう意味において、日本にも軍事産業や宇宙産業といった国レベルの頂点産業が必要ではないかと思うのですが。

     いずれにしろ、人類が続く限り戦争という悲劇はなくなりませんし、いずれは日本も自主防衛をせざるを得なくなるでしょう。そう考えれば今からその方面への投資を始めるべきだと私は考えています。そうでないといつまでも技術の有望シーズはアメリカからの借り物、盗作という現状に甘んじるしかない…それはあまりに情けない、展望のない話ではありませんか。

    「生産技術」を世界に売るという選択肢

     しかし、もし日本がどうしても今の妄信的平和信仰を続けたい(?)、軍事、宇宙分野への投資にアレルギーを示すのであれば、次善の策ですが日本にも世界に売れる技術の種がないわけではありません。私が提案しているのは「生産技術の輸出」です。自動車産業を例にとってみましょう。自動車会社は親会社の組み立て工場の下に部品を製造する多くの下請け会社が広がってピラミッドを形成しているわけですが(部品が数千点、数万点ありますから、それだけ下請けがあるということです)、ご存じのように単純な組み立て分野や製造分野は人件費の安い中国やベトナムにどんどん移行されて日本では空洞化現象が起こっています。なぜそうなるのかというと、それらの分野の大半は世界と差別化できているわけではない、つまり日本でなくても同じものができるからです。もちろん高い精度を要求される特殊部品の製造は別ですが、一般的な組み立てや製造はこれからもどんどん人件費の安い海外に出て行くことになる(製造業への派遣が禁止されればさらに流出が加速するだろうことは言うまでもありません)。これは自動車産業や家電産業のみならず、多くの製造業で同じことが起こっていくことになるでしょう。

     しかし、日本の製造業には「生産技術」という世界と差別化できる技術があるのです。それは、例えば効率的な生産ラインを組む技術だとか「カンバン方式」「カイゼン」「QCサークル」等々の生産効率や社員のモチベーションを上げるシステム、つまり先述した過去の膨張期の「しきい値」を突破する原動力になったソフトのノウハウです。これは世界中が簡単には真似できない。そこで、一社ごとに一つずつ、世界最先端の生産技術を擁するモデル工場を国内に作り、それ以外の一般生産は海外で行う、というのが私の提案です。モデル工場は全員日本人で運営し、優秀で勤勉な日本人を集めてどんどん改善していきながら最新の生産技術を生み出し、世界に売ってノウハウ料で稼ぐわけです。生産技術はソフトですから、売った先で定着するには10年くらいかかる。その間にまた新しい生産技術を開発し、「ニューモデル」として販売する。そういう目的を持ったモデル工場を一社一工場ずつ作るのです。今、世界にある日本の製造企業の工場はなんとか日本の工場と同じシステムで同じことをやっていますが、そんなレベルではなく、各分野の一番のエッセンスを集めたモデル工場だけを日本に作っておき、そこで培われた生産技術を輸出して収入を得ながら、単純な組み立て分野はどんどん外国に出して安い労働力を使って国際競争力も獲得するというわけです。

     ただし、これはあくまで次善の策にしかなりません。新しい生産ソフトやノウハウは技術イノベーションによる差別化と異なり、持続した差別化とは成り得ない。すぐ途上国にキャッチアップされてしまう宿命にあります。従って、成長の主流はどうしてもパルチザンによる成長の種のビジネス化に頼らざるを得ないというのが私の考えです。

    成長産業は大きな雇用を生み出さない

     しかし、軍事、宇宙産業を興し、パルチザンを集めビジネス化し、生産技術で先頭を走る日本を作ったとしても、一つだけ解消できないネックが残ります。それは、確かにそうすれば富は生み出せると思いますが「雇用の創出」という点では大きな効果は期待できないということです。なぜなら、これからの成長産業というのは基本的に人があまり必要ない産業だからです(だから成長するのです)。特にパルチザンが手がけるようなビジネスは、決して労働集約型の産業ではありません。例えばエイズの特効薬ができると巨大な「パルチザン・ビジネス」になりますが、特効薬の製造だけならおそらく千人もいれば世界中に配れるだけの量が生産できる。つまり、これからの成長産業はビジネスとして大きな富を生み出し、GNPを上げ、税収も増やして豊かさの実現に貢献するでしょうが、雇用創出の特効薬にはなり得ないと考えるべきです。もちろんパイが大きくなる分、多少の雇用は創出されるでしょうが、これまでのように売上に比例して雇用が伸びていくのではなく、売上のカーブより雇用のカーブの方が緩やかになる。多くの人がまだ「成長すればそれだけ雇用も増える」と考えているようですが、それは今や幻想だと思った方がいいでしょう。

    雇用問題は人口減が解決する

     では雇用問題はどうすればいいのか? 私は中期的には皮肉なことですが「人口減少」が雇用問題を解決すると考えています。まず、国が豊かになれば出生率は落ちるものです。今、日本の出生率が1.3くらい、それに対しフランスが非嫡出子(結婚していない両親から生まれた子供)を認める等の少子化対応政策が奏功して直近の出生率が1.8くらいになった(生まれた子供の50%以上が非嫡出子)と話題になっていますが、人口を維持するために必要な出生率は2.2と言われていますから、フランスでも緩やかに人口は減り続けているのが現状です。また日本でも、仮に私が提案している「子供が自分の親の面倒を見る」という社会政策(『なんしょんな!香川PART2参照』)が定着したとしてもおそらく2.2には達しないと思います。たぶん1.8くらいが限度ではないでしょうか。

     一方、この2.2という数字は平均寿命が今のまま維持されることを前提とした数字ですが、私は平均寿命は日本では必ず落ちてくると考えています。今、80歳、90歳、100歳と生きている人は明治、大正、昭和初期に生まれた人たちですが、この人たちは物がない時代に贅沢をせずに、また現代のようなストレスもあまりなく、言わば人間として一番長生きできる理想的な(?)生活をしてきた人たちだと言えます。ところが私たち以降の世代はうまいものをたくさん食べ、贅沢をし、ストレス社会に生きているわけですから、どう考えても今の老人ほど長生きができるとは思えない。おそらく数十年のうちに平均寿命はかなり短くなるのではないでしょうか。すると、出生率が伸びない上に長生きもできないわけですから、50年くらい先には日本の人口は8000万人程度になって落ち着くのではないかと思います。そのうち老人と子供がそれぞれ2000万人くらいだとすると、労働人口は4000万人くらいになる。今の労働人口が6500万人くらいですから、それが2500万人も減ると雇用問題は自然に解決するのではないか、というのが私の予測です。「人口8000万人で、経済はパルチザンが生み出す成長ビジネスと生産技術輸出を核にして成長路線を維持し、コンパクトでゆったりした生活のできる国…そういう国を目指そう」と誰かがきちんと提唱すべきではないでしょうか。

     今、政府は何とか日本を内需主導型の国に変えようとシャカリキになっていますが、それはかなり無理があります。まず、人口が減ると当然内需も減ります。さらに、日本人というのは世界的にも類のない「お金を貯めて使わない民族」ですから、日本で内需主導型の国を目指すのは構造的に限界があるのです。加えて今の日本では豊かになりすぎて物があふれ、大きな内需を生み出すような「欲しい物」がほとんどありません。唯一あるとすれば「広い家」ですが、これは規制のせいで安く買えないだけなので規制緩和すれば買えるようになるものの、それも数十年で家が行き渡ってしまえばまた「お金を使わない民族」に戻ってしまう。つまり「広い家」も一過性の消費財に過ぎず、国民性という動かしがたい壁に阻まれて日本は継続的な内需主導の国には絶対になれないと知るべきです。従って、構造的に日本は輸出主導型にならざるを得ないのです。世界のみんなが「買いたい」と思うような商品や技術をどんどん作り出すような国にすれば、継続的な成長も十分可能になってきます。今、輸出がなぜ伸びないかというと、世界が「買いたい」と思う物を先取りして作れていないからです。なぜ作れていないのかと言えば、日本にパルチザンがいないからです。それは日本がパルチザンを追い出すような政策を続けてきたからに他ならない。では、パルチザンが居着くような政策に転換すればいい。結局すべてそこにつながってくるのです。

     少し話が広がってしまいましたが、まとめますと、
    ・国や企業には「利益欠乏症」と「成長欠乏症」があり、それに対する処方箋はそれぞれ違う。
    ・日本は今「成長欠乏症」にかかっている。「成長欠乏症」を克服するにはパルチザンのエネルギーが必要だ。従って、パルチザンが集まってくる国を目指すべきだ。
    ・しかしそれは雇用対策にはあまり効かないので、雇用には人口減で解決することになろう。
    ・日本は輸出主導型を目指すしかない。

    ということになります。すると、将来の日本のあるべき姿がある程度出てくるではありませんか? すなわち50年後、日本は人口が8000万人程度になり、世界に先駆けたビジネスや技術を継続的に生み出しながら安定成長をし、国民は世界で唯一子供と親が同居しながら豊かな生活をしている…という非常にユニークな国の姿が見えてくるのではないでしょうか。