書籍

なんしょんな!!香川・PARTT
なんしょんな!!香川・PARTT
「行政の役割」水は誰のものか/人の渡らぬ橋、車の走らぬ道/広い家 他
1,200円(税込み)
有料会員のみ閲覧できます
なんしょんな!!香川・PARTU
なんしょんな!!香川・PARTU
「高齢者対策の処方箋」
1,200円(税込み)
有料会員のみ閲覧できます
なんしょんな!!香川・PARTV
なんしょんな!!香川・PARTV
「教育の危機」学校教育の危機/崩壊する家庭教育/的外れの企業内教育
1,200円+税
有料会員のみ閲覧できます
なんしょんな!!香川・Q&A BOOK
なんしょんな!!香川・Q&A BOOK
「Q&A」行政の役割/水問題/交通問題/時事
800円(税込み)
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKU
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKU
この本は、都村長生氏の政経塾「長生塾」とそのホームページに寄せられた質問に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです
800円+税
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKV
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKV
この本は、当ホームページに寄せられた質問に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです。
100円+税
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKW
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKW
この本は、当ホームページに寄せられた質問(2003年5月〜2007年3月)に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです。
100円+税
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKX
なんしょんな!!香川・Q&A BOOKX
この本は、当ホームページに寄せられた質問(2007年5月〜2008年12月)に対し、都村氏が答えた内容をまとめたものです。
100円+税

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なんしょんな Q&A詳細

  • 【227】 欧州ソブリン危機を考える(2011.11.20) (小野勝司)
    いつも興味深く拝見させて頂いております。ところで、現下の欧州ソブリン危機の解決策について先生はどのようにお考えでしょうか。いくら経常赤字を出しても為替レートの変動で調整されないから、財政赤字でファイナンスするしかない(例:ギリシア)というユーロ圏の抱える根本的な問題を解決しようとすると、EUがECBのみならず徴税権や予算権を持つ欧州政府になるか、或いはギリシアみたいな国をユーロ圏から離脱させる仕組みでもない限りどうにもならないのではないか、と思います。また、仮に欧州政府を作ったとしても、民族間の価値観の違い(例:ドイツ人vsラテン系)もあるだろうし、そもそも図体が大き過ぎて上手くガバナンスが働かないような気がします。
  •  ギリシャの財政問題に端を発してヨーロッパ全体の金融システムにソブリン危機が訪れている、どうするのか? という話ですね。結論から言うと、小野さんのおっしゃる通り、財政破綻国をEUから強制離脱させる仕組みを作らない限り解はない、というのが私の意見です。つまり、今回EUのリーダーたちが模索している「ギリシャを域内に残すことを前提としたソフトランディング」では問題を先送りするだけで何の解決にもならない、解はハードランディング(ギリシャにビジネスで言う「チャプター11」を適用し切り離して再建するしかない)しかない、と考えています。ここでは、ご質問内容が国単位(ギリシャ)の小さな話とEU全体の大きな話が一緒になっているようですので、一度原点に帰って、
    (1)何が起こっているのか?
    (2)ではどうすればいいのか?
    の2つに分けて、シンプルに考えていきましょう。

    お金のない者が放蕩して災禍を招いた

     今回の問題の発端となったギリシャに関する報道を見ていて、私はすぐに「ああ、また同じことが起こってしまった」と思いました。何と同じことが起こったのか? それは、1980年代に始まり1990年に起こった「日本の土地バブル崩壊」と、2000年初頭から起こり2007年に表面化したサブプライムローン問題に端を発する「アメリカの住宅バブル崩壊〜リーマンショック」です。報道を見ている限り誰もこのことには言及していないのですが、私に言わせれば、日本の土地バブル崩壊とアメリカのリーマンショック、そして今回の欧州ソブリン危機はその根本に全く同じ構造的要因(現象)がある。それは、簡単に言えばいずれも「お金のない者が(に)放蕩して(させて)破綻した」ということに尽きます(ギリシャはまだ破綻していませんが、もはや破綻と同義でしょう)。では、一つずつ見て行きましょう。

     まず、日本の土地バブルは、日本中の誰も彼もが「土地の値段がどんどん上がる」と信じて浮かれ返り、お金もないのに銀行から借金をしてどんどん土地を買い続けたことで起こったバブルですね。個人も土地に投資しましたが、投資額から見れば主役は圧倒的に「企業」です。大企業から中小零細企業まで、日本中のほとんどの企業が、身の丈を遙かに上回るお金を銀行から借りてまで本業そっちのけで土地に投資しました。銀行も浮かれて我も我もと貧乏な会社にまでどんどんお金を貸しましたから、あっという間に土地バブルが形成されてしまった。その結果、バブルがはじけて土地の値段が下がると日本中の企業が軒並み巨額の含み損を抱えるはめになり(バランスシートの左下の価値が暴落し債務超過になった)、企業はバランスシートを正常な状態に戻すため、ひたすら投資を控えて借金を返し続けた。結果、成長が止まり、日本経済はどん底に落ち込んだわけです。これは、言わば「お金もない『企業』が身の丈をわきまえずに放蕩して破産した」ということでしょう。

     一方、アメリカの住宅バブルの発端となった「サブプライムローン」とは、文字通り、プライム(優良客)層より下のサブプライム層、すなわち通常では貸し出し審査に通らないような信用度の低い「個人」向けのローンですね。これを使って浮かれた貧乏な個人がどんどんお金を借りて住宅を購入し、住宅バブルが起こりました。日本と異なるのは、小知恵のきく銀行がハイリスクをヘッジするためにローンを証券化する等、金融テクニックを使って別の金融商品に紛れ込ませ、世界中にどんどんこのリスクを分散してしまったことです。その結果、世界中にソブリン危機が広がってしまったわけです。この住宅バブルの主役は「個人」です。そして、住宅バブルが崩壊すると当然個人は破産し、証券化されたサブプライムローンを組み込んだ金融商品を売りまくった証券会社が巨額の不良債権を抱えて破綻し、リーマンショックに代表される世界的な金融危機を招いてしまった。こちらは、要するに「お金もない『個人』が身の丈をわきまえずに放蕩して破産した」のが元々の原因だと言えるでしょう。

     そして、ギリシャです。私はギリシャに行ったことがないので詳しくは知りませんが、よく言われるようにギリシャは産業らしき産業がほとんどなく(観光業が7割を占めると言われている)、GDPはわずか30兆円足らず(日本は約500兆円)しかない貧しい国です。それにも拘わらず、国家予算は直近で12兆円(税収5兆円、赤字国債7兆円)もあり、国民の4人に1人(3人に1人とも)が公務員だとも言われている。年金受給者の平均年齢は61歳(!)で、50代前半からもらえる人もいる。しかも退職前給与の96%も支給される・・・等々。そうやって稼ぎもないのに国が贅沢にお金を使い続けてきた結果、国債発行残高がGDPの120%を超え30兆円に達してしまった。しかも、そのうちの7割以上を外国(ヨーロッパの他国を中心に)が買っているため、他国の金融機関にも影響が及び、いわゆる「欧州ソブリン危機」を招くことになったのです。すなわち、ギリシャの場合は企業でもなく個人でもなく、「国」が身の丈をわきまえずに放蕩したわけです。

    “放蕩息子”に金を渡すと、どんどん放蕩する

     日本もアメリカもそうでしたが、ギリシャが放蕩を続けられたのも当然、お金を貸す者がいたからです。それは主にフランスとドイツの銀行ですね。銀行というのは市場から資金を調達し、調達金利より高い金利で運用して利益を上げるビジネスですから、当然、経済が成長している(あるいは成長しそうな)地域や伸びている(伸びそうな)企業にお金を回します。EUの場合、通貨は統一されましたが財政は各国ごとに別々に行われていますから(本来はこれも統一すべきだったのですが)、国ごとに貸付金利の差が出てきます。そして、ギリシャをはじめとする貧しい国(ある種「途上国」と言ってもいいでしょう)はリスクが高い分、金利も高く、ビジネスや消費が立ち上がれば大きく成長する可能性もあるため、フランスやドイツの銀行はEU加盟国のうち“貧しい”ギリシャやスペイン、ポルトガル、イタリア等(の銀行)にどんどんお金を回したのです。その結果、融資を受けた各国の銀行からそれぞれの国内にお金が出回り、国内にお金があふれることになりました。すると、どうなるか? 今、破綻の危機に陥っているギリシャ等の国々は、融資されたお金をビジネスに投資することなく、それまでずっと続けてきた贅沢に上乗せして浪費してしまったのです。

     では、贅沢とか浪費とかいう「放蕩」とはどういうことか? 私が体験したエピソードをいくつか挙げましょう。確か1992年にEU(欧州連合)が発足した1〜2年後に、私はスペインとポルトガルを旅行しました。まずポルトガルに行くと、あの貧しい国の田舎にまで広くて新しい道路がたくさん造られ、立派な高速道路が延々と伸びている。しかも、ETCが導入され、ほとんどの車がETCを搭載して走っているのです(日本でETCの運用が始まったのは2001年ですよ)。私が「すごいシステムだな」と驚くと、「日本にはETCはまだないのか?」と笑われましたよ。あれから20年、ポルトガルでどんどんビジネスが起こって成長したという話は聞いたことがありません。結局、ポルトガルはEU加盟によって流れ込んできた資金の多くを無用なインフラにつぎ込んできた(政府の放蕩)と言えるでしょう。

     また、スペインではラテン系特有の個人のメンタリティを見ることができました。あの頃、南スペインの街中のあちこちのバル(BAR)で毎晩のようにどんちゃん騒ぎが行われていました。そこで私が「なぜこんなに賑やかなんだ?」と尋ねると、「EUに入ったから、フランスとドイツがどんどんお金をくれるんだ。EU加入は素晴らしいことだ」と言うのです。私は驚いて「どうやってそのお金が君に手に入ったんだ?」と尋ねると、「銀行がいくらでもお金をくれる」と言う(笑)。驚くべきことに、彼らには「借金をした」という感覚が全くない、神様がお金をくれたように思っているのです。「そのお金は何に使ったんだ?」という質問に対する答は、実にあっけらかんと「お祝いに親戚中全員に新しい服を一着ずつ作った」「EU加入記念のパーティーを1週間やり続けた」・・・等々で「もうほとんど使ってしまった」と胸を張って言う。そこで私が「でも返すのが大変だろう」と言うと、彼らは何と言ったと思いますか? 「えっ? 返すのか? 冗談だろう?」、それが彼らの答でした。とにかく彼らは「あれはEUができたからお祝いでフランスとドイツがくれたんだろう」と言い張るのです。

     ラテン系のメンタリティとはそういうものなのです。そのDNAに南スペインではアラブ系の「そこにあるものはみんなのもの、他人のものも自分のもの」というメンタリティが加わってくるから、さらに「宴」はひどくなる。ただ、スペインは少なからず産業がありますから、まだましな方でしょう。南のアンダルシアをはじめとする太陽海岸あたりはアラブ系が入ってほとんど働かない地域ですが(そこでは銀行は午前中しか開きません。午後はずっとシエスタですよ)、マドリードを中心とする北部は一生懸命働くので、そこにお金が回ると多少は成長する可能性もあります。しかし、ギリシャは産業もない上にほとんど公務員ばかりで、誰も一生懸命働かない。そんなところにお金を貸すと、産業も生み出さず、どんどん浪費してしまうのは火を見るより明らかではないでしょうか。

     翻って、日本の土地バブルに踊った放蕩企業も、彼らにどんどんお金を貸したら、本業そっちのけで働かずとも利益を得られる「濡れ手で粟」の土地投資にどんどんお金をつぎ込んだ。アメリカのサブプライム層も、銀行が金を貸したら分不相応の住宅や家具をどんどん買って放蕩した。要するに、「放蕩息子にお金を回すといくらでも放蕩する」という当たり前のことが、この30年間に世界で続けて起こってしまったわけです。「日本の土地バブル」「アメリカのリーマンショック」「ギリシャ等EU諸国の財政危機」という大きな経済危機を招いたこの3つの事件は、企業、個人、国と主役が違っているために多くの人が別々の現象だと思っているようですが、こういう視点で見ると、基本的に全く同じ構造なのです。すると、「何をすべきか?」という対策も必然的に同じになることはおわかりでしょう。

    短期的に金融収縮を防ぎ、長期的に成長産業を育てるのが解

     では、ご質問の本題に返って、このEUの混乱を立て直すためにどうすればいいか? を考えてみましょう。もうお気づきかと思いますが、その解はすでに本欄で何度もお答えしてあります。すなわち、根本原因が「日本の土地バブル」「アメリカの住宅バブル」と同じなのですから、それらを立て直す時の鉄則に沿って対策を行えばいいのです(Q134Q138Q145参照)。再掲しますと、金融経済が破綻すると金融収縮が起こり、実体経済にお金が回らなくなって、実体経済まで収縮し始める。従って、
    (1)短期的には政府が市場に金を回し金融経済の収縮を防ぐ。
    (2)中長期的には実体経済を立ち上げる経済政策を打つ。
    の2つのステップで対策を打つ、ということです。金融経済というのは「モノやサービスを作って売る」という実体経済ではなく、本来実体経済に使われる「お金」を回して利ざやを稼ぐという、いわば「虚像の経済」ですね。従って、最終的には実体経済が立ち上がらない限り、地域経済は健康になりません。しかし、金融経済が破綻して収縮してしまうと(短期市場で銀行がお金を調達できなくなる)、市場に実体経済を立ち上げるためのお金が回らなくなりますから、まず緊急に金融収縮を防ぐ手を打ち、市場に金が回るようにしなければならない。その後、ビジネスを興して実体経済を活性化させる。これが原則となるわけです。

     金融収縮を防ぐための手段は、中央銀行等が銀行に資金を投入する、紙幣を増刷する、政府が基金等を作り、「どんなに貸し渋りが起こっても金を回す」仕組みを作る・・・等々、いくつもあります。その際の鉄則が、とにかく「早く、大きく」手を打つことだ、というのはこれまでに何度も述べました(Q138参照)。ただし、繰り返しますが、これらの金融政策は経済立て直しの短期的なカンフル剤に過ぎない。金融収縮を防いだからといって実体経済が立ち直るわけではありませんから、続いて中長期的に実体経済立ち上げのための戦略を実行しなければなりません。そのためには、次の2つのことを実行しなくてはなりません。まず第1は(a)放蕩をストップすることです。いくら金をつぎ込んでもザルの底が抜けていては何の効果もありません。従って、緊急に大幅にコストカットし、財政再建に着手する必要があります。それと同時に第2は(b)財政立て直しで出てきたお金を成長分野に重点投資し、新しい成長産業を立ち上げることです(Q164参照)。この2つを同時進行でやる必要があります。

     金融破綻〜バブル崩壊というのは、要するに「虚像の経済」が一挙にしぼんでしまうわけですね。そのあおりを食って、実体経済も消費が落ち、大きくしぼんでしまう。それを回復するために平気で「もう一度バブルを起こせばいい」と言う人がいますが、また虚像の経済を作ろうというのですから何をか況んやです。かといって、実体経済において上記の(a)のコストカットだけを行っても、つまり既存のビジネスの効率改善や営業努力をいくらやっても出血が止まるだけで(もちろんやらねばならないことですが)、大きく落ち込んだ消費を回復するには至りません。従って、根本的な解決策は(b)「新たな成長産業を生み出す」しかないのです。そのためにはどうするのか? 私は今まで、成長を生み出すのは「組織」ではなく能力のある「個人」、すなわちパルチザンであることも何度も述べてきました(『なんしょんな!香川PART1』、Q164等参照)。すると、パルチザンを優遇し、パルチザンに新しいビジネスを興してもらって産業を成長させる社会を作ることが、実体経済を回復させる唯一の解となってくるのはおわかりでしょう。

    アメリカも日本も「成長」を作り出せなかった

     では、日本とアメリカがそれぞれの「バブル崩壊〜金融危機」に際して何をやったか? を反省を込めて振り返ってみましょう。まず、日本は第1ステップ(1)の「早く、大きくお金を投入する」ところで「遅く、小さく」やってしまった。その結果、案の定、露骨に金融収縮(貸し渋り、貸し剥がし等)が起こってしまい、実体経済が縮小してしまったのは皆さんご存じの通りです(Q138参照)。その間、金融機関はゼロ金利をずっと続けて「国民のお金で穴埋めをする(本来預金者に渡すべき利子をゼロにして運用益を上げた)」という有様で、結局、金融機関がバランスシートを修復するだけで10年以上もかかってしまった。加えて、(2-a)の社会的コストカットも「民意様」の顔色をうかがったためほとんどできず、(2-b)の成長戦略に至っては「環境、介護、観光」などという的外れなことを掲げて全く機能せず、日本経済はあれから20年も経った未だに縮こまったままになっているわけです。

     一方、アメリカは最初は少しうろたえたようですが、それなりに「早く大きく」お金をつぎ込んで、ある程度うまく金融を立て直したと言えます。日本と違ってアメリカはリーマンショックを受けても企業のバランスシートはそう傷んでいないので、1年くらいかけて消費の落ち込んだ分企業がコストダウンを行い、その後、「アメリカンドリーム」と言われるようにアメリカお得意のベンチャービジネスが立ち上がってくれば、おそらく4〜5年でアメリカ経済は再度立ち直るだろう、というのが私の見立てでした(Q134参照)。ところが、どうもこれは少し私の見込み違いだったようです。コストダウンまではうまくやれましたが、最後のステップで躓いてしまったのです。

     アメリカは「能力のない者が何万人、何十万人いようが、ビル・ゲイツのようなパルチザンが1人出てくれば大きなビジネスが起こり、国の経済を引っ張っていける」というポリシーで今まで成功してきたのですが、近年、優秀な人材の大半が手軽に儲かる金融ビジネスに行ってしまい、実体経済の方に新しい成長産業があまり生まれなくなってきている。加えて、軍事産業も宇宙産業も縮小策をとっており、そこから新しい技術のタネも生まれにくくなってきている。もちろんアメリカはビジネスの規制も少なく、今でも世界で最も自由にビジネスができる国ですから、日本とは一桁違った数のベンチャービジネスが生まれていますが、それでも以前と比べればだんだんパルチザンが出にくくなっている・・・というのが最近の私の観測です(「スティーブ・ジョブズが最後のアメリカンドリームだ」という報道がそれを如実に表しています)。結局、アメリカもその後、有望な成長産業を思うように生み出せず、実体経済の立ち上げは少し遅れてしまったと言えるでしょう。そこにギリシャ問題が飛び火し、ヨーロッパ国債を大量に抱えていた一部の金融機関が破綻してしまった、それが現状です。

     ちなみに、アメリカは経済状況(財政)が悪くなると軍事力をバックに「すべて為替で解決しようとする」という伝統的な戦略、言わば「奥の手」(私に言わせれば禁じ手)を持っています。かつては日本に円の切り上げを合意させ(1985年のプラザ合意)、以来、1ドル250円くらいだった為替レートは今や80円にまでなりましたが、その差額はアメリカの輸出産業の“濡れ手で粟”の利益になったわけです。そして今度は、“夢よもう一度”と中国に元の切り上げを迫っていますね。どういうことか? 

     アメリカはリーマンショックへの対応策として、まず中国にバブルを起こさせ、米国債を買わせ、そこに輸出をして大きな利益を上げ財政再建しようとしましたが、アメリカ企業以上に他国の企業がどんどん中国に進出して、目論見通りの輸出増に至らなかった。そもそもバブルで受けた傷を新たなバブル(しかも他国のバブル)で治そうなどという企みがうまくいくわけがない! そこで、最後に「為替戦略」という伝家の宝刀を抜いて、元の切り上げを迫っているのが現在なのです。オバマ大統領が「輸出を2倍にする」と公言しましたが、要するにそれは「すべてを一気に為替で解決しよう」という戦略に他ならない。しかし、言うまでもなくそれは対症療法に過ぎず、自国の実体経済を立ち上がらせる根本策にはなり得ません。従って、これも、新しい成長戦略を生み出しきれないアメリカの焦りを表す一つの事例だと言えるかもしれません。

    ギリシャには経済再建の解がない

     では、ギリシャはどうすればよいのか? 前述した「再建の鉄則」に従えば、まず金融収縮を防ぐために早く大きく資金を投入する。そして、徹底的にギリシャにコストダウン(財政再建)させる。次に、日本もアメリカもうまくいかなかった「成長産業の創出」のためにパルチザン優遇政策を実行すればよい・・・という話になります。ところが、私はギリシャではおそらくそれができないと思います。なぜか? それは、ギリシャ人が決定的に「働かない」からです。おそらくコストダウンのステップで躓いてしまうと思いますよ。

     「再建の鉄則」を実行するためには、その背景に大前提として「放蕩をやめる」、つまり「行政も企業も個人も我慢をし、頑張って働く」というメンタリティが必要であることは言うまでもありません。そして、日本人もアメリカ人も(アメリカ人は少々疑わしい部分がありますが)、最低限、その前提となるメンタリティは大多数の国民が持っているわけです。ところが、ギリシャ人はそうではない。今回の欧州ソブリン危機におけるギリシャの状況を見ていると、各国からの「まず分不相応な贅沢を切り詰めて我慢しろ」という条件に対し、この期に及んでもそれを受け入れようとしない。ギリシャ国民も、今の「宴」をやめたくないからEUを出たくない、しかし我慢はしたくない。本来ならギリシャの政治家が国民に向かって「国を立て直すために、まず分相応な生活に戻って我慢しよう」と言うべきところなのに、破綻寸前になっても政治家は我慢したくない、国民も我慢したくない・・・要するに今のギリシャ国民は私の言う「民意様」の典型、いや、日本の「民意様」よりはるかに個人主義でわがままな「超民意様」であり、その「超民意様」が選んだ政治家たちによるギリシャの今の政治は、衆愚政治の典型だと言えるのではないでしょうか。

     その証拠に、ギリシャのパパンドレウ首相が「EUを離脱するかどうか」という重大な選択を国民投票にかけようとしましたね。直接民主主義国家ならともかく(遠い昔、アテナィはそうでしたが)、間接民主主義国家においては、「EUに残るか、離脱するか」などという重大な政治案件は政治家がリスクをとって決め、国民を説得するものです。それを国民に丸投げするというのは、政治家が仕事を放棄したのと同じではないでしょうか。いずれにしろ、すべての再建策の前提となる「国民が我慢し、一生懸命働く」というメンタリティのない国においては、再建のための「解」はない、と言わざるを得ないのです。パルチザン云々以前の問題でしょう。

    EUを機能させるためにはギリシャを切り離すしかない

     ここまでは、日本やアメリカと比較しながら主に「ギリシャ」という一つの国について考えてきました。では、ここからは、その“放蕩息子”のギリシャを抱えるEUはどうするべきか? を考えてみましょう。結論から言えば、EUはギリシャを切り離すしかない、というのが私の意見です。理由は改めて言うまでもありません。「働かないし我慢もしない国」にいくらお金をつぎ込んでも、放蕩し続けるだけだからです。首相が辞任するとか連立内閣を組むとかの動きがあるようですが、そんなもので根本的なメンタリティが変わって「切り詰めて我慢して一生懸命働く国」になれるはずがありません。そして、そういうザルの底が抜けた国を抱えたままEUが健全に機能する方法などない、と知るべきです。

     切り離されたギリシャはどうなるか? おそらく国が破綻することになるでしょう。具体的には、通貨がユーロからドラクマに戻ることになりますが、ドラクマのユーロに対する交換比率は信じられないくらい高くなりますよ。さらに、破綻が見えている国にお金を貸すようなところ(他国の銀行等)はありませんから、ギリシャは自力でお金を調達せざるを得なくなる。しかし、お金を稼ぐ産業もないため、また放蕩は止まらないため、結局自国でお札をどんどん刷って発行するしか方法はありません。すると、国債の金利は上がり、国内のあらゆる金利が上がり、物価が上がり、たちまちハイパーインフレに向かうことになる、当然の帰結としてデフォルト(債務不履行、国債の踏み倒し)となります。かつて数千パーセントのインフレを招いて破綻したアルゼンチンやロシアと同じです。しかし、乱暴なようでもそれが再建の一番の近道なのです。国も会社も、再建のためには悪いものは一回本体から切り離し、膿んだ部位を外科的に取り除くしかないのです。もちろん、そうすれば一時的な混乱は必ず起こりますが、外科手術で悪い部分が取り除かれるのですから回復も早い。それがビジネスでの会社再建の鉄則なのです。

     ただし、現在のEUのルールでは、EUから加盟国を切り離すことはできないことになっています(自発的な離脱のみ認められている)。本来は切り離すためのルールを作っておくべきだったのですが、おそらくこういう事態が起こることを想定していなかったのでしょう。しかし、破綻したくないギリシャが自発的に離脱することは望めないとなると、EUがやるべきことは「切り離すルールを作る」ことしかありません。「決められた条件を満たさない国はEUを出て行ってもらう。そして、自力で再建を果たして条件を満たせば、再審査ののち、再加盟を認める」というルールを作り、ギリシャを切り離す。また、同様の危機を抱えていると言われるイタリアやスペイン等にも、新しいルールを適用する。まずはそこから始めない限り、EUはいずれ立ちゆかなくなると思います。実質破綻し再建する意志も力もないギリシャをごまかしながら抱えたままでは、市場は必ず「次のギリシャ(生け贄)」を探します。なぜなら、EUの「ソブリンリスクは完治した」という判断を市場が信用していないのですから・・・。その信用のベースとなるのが前述のルールなのです。

     ちなみに、ご質問にある「そもそも図体が大き過ぎて上手くガバナンスが働かないような気がします」というご意見には全く同感です。EUという組織体を有効に機能させるためには、理論的には、極論すれば通貨だけでなく財政も統一してEU全体を一国とするくらいのシステムが必要になると思います。今のEUは、アメリカに例えれば「連邦政府がほとんど経済政策について権限を持っていない、州ごとに勝手にバラバラに軍隊を持って経済運営を行っているアメリカ合衆国が存在しうるか?」と考えてみれば一番わかりやすいでしょう。国でも会社でも、マネジするには必ず強制力が必要なのですよ。しかし、もしそんな強制力を持った強力な「欧州大政府」を作ったとしても、中国問題(Q76)でお話ししたように、人間が民主主義でマネジできるサイズには限界があるのです。従って、現実的には「切り離すルール」を作って問題を最小限にしながら運営していくしかないだろう、というのが私の意見です。

    同根かつ桁違いの「中国バブル崩壊」が迫っている

     最後に、もう一つの深刻な危機の到来を指摘しておきます。今回のギリシャの危機は確かに大きな問題ではありますが、私に言わせればギリシャはたかだかGNP30兆円に満たない小さな国ですから、どう転んでもそれほど大きなソブリンリスクを招くことはないだろうと思っています。しかし、それよりもはるかに巨大な、先述した日本やアメリカのバブルさえはるかに凌ぐ巨大なバブルがはじける危機が迫っていることに、我々は思いを馳せねばなりません。言うまでもなく、それは中国です。

     多くの人が「中国は着実に成長を遂げてきた国で、借金もなくどんどん稼いでいる」と思っているようですが、それは全くの間違いです。中国は今、成長のツケとしてとてつもなく巨額の不良債権を抱えているはずです。例えば、まず第1に、ものすごい土地バブルが間違いなく不良債権化する。都市部のみならず、地方でも企業が地方政府を通して農民から土地を強制的に安く買い上げて土地高騰のバブルに踊っているため、ほとんど中国全土の地方政府および企業が桁違いの潜在的不良債権を持っているはずなのです。土地を安く取り上げられた農民による訴訟、暴動が、一説によると年間数十万件に達しているという話もある・・・そこでもし地価が暴落すれば何が起こるか? 想像を絶する事態となるはずです。

     第2に、未だに表には出ていませんが、中国の金融機関がサブプライムローンのような表面上高利回りの金融商品を買っていないはずがありませんから、そこにも間違いなく巨額の不良債権が隠れているはずです。しかし、もしこれを表面化させれば当事者は命に関わりますから、絶対に表に出てくるはずがない。恐ろしい話です。第3、さらに個人もそうです。例えば月収5000元程度の労働者が、数十万元の車や数百万元もするマンションをローンでどんどん買っている。誰も完済することなど考えていないことは、以前のインタビュー結果で申し上げました(Q76参照)。当然、彼らにどんどんお金を貸している銀行は、いずれ不良債化する危険の大きい巨額の債権を抱えている・・・等々。

     先に日本は「企業」が、アメリカは「個人」が、ギリシャは「国」が分不相応の金を借りて放蕩してしまった、と申し上げましたが、中国は今、この30年間の世界のツケ(放蕩する個人、企業、国)を全部内部に抱えていると言っていいでしょう。しかも、今や「バブルがいつはじけるか」という局面にあるにも拘わらず、その規模(不良債権総額)がどれほどのものになるのかさえ、誰にもわからない(私は日本やアメリカの一桁上を行く規模だと推測していますが)。ましてや、「中国のバブルがはじけると何が起こるのか?」となると、それは「パンドラの箱」が開くのと同じで、際限なくどこまで“災い”が出てくるのか、誰にもわからないのです。しかし、いずれ間違いなく中国のバブルははじけるでしょう。貧富の差が1万倍ある社会が持続できるはずがない。それは世界の歴史が証明していることです(Q76参照)。その時、あふれ出る“災い”の最後に“希望”が残っていることを私は願うばかりです。

    *この回答は11月4日にまとめたものです。今後、放蕩癖のついたギリシャ政府とギリシャ国民の選択がどう転ぶのか予測もつきませんので、状況が大きく変化した場合はご容赦下さい。